接着の科学

先日、「接着のメカニズムと接着剤の選択」と題する講演を行う機会を得ました。接着の原理、テフロン用接着剤、分子設計と分子内相分離について強調しました。ここでは、代表的な接着剤である「アロンアルファ」とエポキシ樹脂の接着のメカニズムについて述べます。瞬間接着剤であるアロンアルファは使用前はモノマー(単量体)ですが、大気に触れると大気中の水分H2Oを瞬間的にモノマーに取り込み、モノマーが連鎖的につながります。つまりアニオン重合してポリマー(高分子)となり、硬化します。アロンアルファは分子内に電子吸引性をもつシアノ基とカルボニル基を持っているのでメチレン炭素(CH2)が電気的に強いδ+性を帯びています。そのために反応開始時にCH2のCがH2Oの酸素と結合し、H2O-CH2-C-CN(COO-R)ができます。こうしてアロンアルファと金属は分子間力の一種である水素結合します。要するに、水素結合(アロンアルファーH-O-H-金属酸化物中の酸素O)によって2枚の金属が接着します。一般に酸化している金属表面の酸化物中の酸素Oは水素より電気陰性度(電子を引きつけやすい)が大きいことが知られています。一方、エポキシ樹脂と銅板の接着について考えてみます。これはエポキシ樹脂中のOH基と銅表面の酸化膜Cu-Oとが水素結合により相互作用を受け接着します。水素結合とは水素原子が電気陰性度の高い酸素のような原子Aと結合していると他の原子Bに対しても親和力を示し、A-H-Bのような結合を示すことがあります。これを水素結合と言います。銅とエポキシ樹脂の場合、エポキシ樹脂のOH基においては水素Hは電気陰性度の酸素と結合しているので、銅酸化物Cu-Oの酸素Oと水素結合(エポキシ樹脂本体-O-H-O-銅)することになります。アルミとエポキシ樹脂の場合、アミン硬化剤のN(δ+)とアルミ表面にある酸化アルミニウムの酸素(δ-)が結合すると言われています。