錆びの科学

水中での金属を加工する際に発生するさび、とりわけ鉄さびの防止法について考える機会を得ました。鉄が水中の水分と溶存酸素(水中には酸素が一定濃度溶け込んでいる)により酸化されると水酸化第一鉄Fe(OH)2が生じます。つまり溶存酸素は、水分子(H2O) とともに還元されて水酸化物イオン(OH)-になります。この還元に必要な電子は鉄がイオンになって水中に溶け込むことにより生成しています。水酸化第一鉄は直に酸化されて水酸化第二鉄2Fe(OH)3となります。この化合物は結晶水を持つ酸化鉄Fe2O3・3H2Oいわゆる赤さびです。塩水中でも淡水中同様に赤さびができます。さび(腐食)の進行は溶存酸素の拡散速度に依存します。塩水中では、溶存酸素の拡散速度に依存する腐食の進行は塩分濃度3%まで速くなり、3%を越えると減少します。それは、酸素の溶解度が塩分濃度の増加につれて増大するに対して、導電率は塩分濃度の増加につれて減少するからです。一般に溶存酸素の拡散速度は溶液の導電率に依存し、導電率が増大すると溶存酸素も増えていきます。さて、さびを防止するには、溶存酸素と水分を除去する必要があります。水中で金属を加工(ワイヤーカット放電)する場合、水分の除去はできないので溶存酸素を除去することになります。脱溶存酸素除去剤として、亜硫酸ナトリウム(現像液の酸化防止剤、脱色剤、試薬など)、亜ジチオン酸ナトリウム(食品酸化防止剤、漂白剤、還元剤など)、硫酸ナトリウム(入浴剤、漢方薬)、鉄粉などがあります。水道水を使用する場合、塩素(次亜塩素酸ナトリウム)除去剤としてチオ硫酸ナトリウム(写真定着剤、ハイポ)、亜硫酸ナトリウム(防腐剤、脱塩素剤定着液)などがあります。